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第十回:「流行り廃り」

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むかーしむかしのお話です。

長老「リーチには絶対に放銃してはいけない」

という長老の教えを信仰している集落がありました。集落の民はその教えを忠実に守り、リーチを受けると懸命にベタオリをしていたのです。

ある日のことです。集落に住むある若者はこう考えました。

若者「皆が教え通りに打つのなら、どんな愚形でも先にリーチしたほうが有利なのではないだろうか?」

若者は今までと打ち方を変え、一切手作りをせず一貫して先制リーチ効率重視の打ち方にしてみました。

うまくはまったのか若者は見違えて成績を伸ばすことに成功しました。周りも勝っている若者の打ち方を真似るようになり「棒テン即リーチ」の戦術が大流行したのです。

努力家は昔から長老の教えに疑問を抱いていました。

努力家「そもそもリーチに全員ベタオリしてたらリーチの一人勝ちじゃないのか?」

また、努力家は「棒テン即リーチ」の戦術にも疑問を抱いていました。

努力家「ベタオリが多いステージでは有効でも、押し返す人が多くなったらどうだろうか?」

努力家は教えに背き、押す条件を満たす手牌を研究し、リーチにもガンガンぶつけていく打ち方に変えてみることにしました。

うまくはまったのか、努力家は見違えて成績を伸ばすことに成功しました。周りも努力家の打ち方を真似、リーチに押し返していく人が徐々に増えていったのです。

集落の麻雀は次第に変わっていきました。その変化についていけず、かつての勝ち組だった長老派の人達は全く勝てなくなりました。また「棒テン即リーチ」の戦術を編み出した若者も徐々に勝てなくなりました。長老も若者も、かつて自分が勝ってきた打ち方を頑なに変えようとせず、昔の勝っていた時のことを思い出しては――

長老「リーチに一切危険牌を打たず、打ちまわしてアガリを拾うレベルの高い打ち手がいなくなった」

若者「バカみたいに押し返すレベルの低い打ち手が増えて、場が荒れてやりにくくなった」

そして2人とも声をそろえてこう言うのです。

長老・若者「昔のほうが今に比べてレベルが高かった――」

おしまい

「ゲーム理論」という有名な理論があります。相手の打ち方を読んで、できる限り自分の得点を高くし、できるかぎり失点を少なくするためにはどのようにしたらよいか。そういった方策を求める数学理論です。

自分が普段打っているステージの戦略が、他のステージでも有効であるとは限りません。麻雀も対人ゲームです。対戦相手が選択する傾向によって、最適戦略が変わってくるのは極々自然な考え方なのです。





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